疾患の説明
疾患の説明

骨折

骨に強い外力が加わることにより、折れたりひびが入ったり、潰れたりするような状態のことです。症状としては、局所の激痛、圧痛、運動時痛、腫脹、内出血などがあります。

これらの症状が見られたり、単なる打撲にしては局所の腫脹や疼痛が長引くような場合は、レントゲン検査やCTスキャンによる検査をお勧めします。

骨折の治療は、その部位や程度、年齢により異なります。「ずれ」の少ない骨折や安定した骨折なら、ギプスを巻いたりする保存的治療で良いことが多いのですが「ずれ」が多かったり、不安定な骨折の場合、手術が必要になる場合があります。

骨折の程度を見分けるには専門的な知識が必要ですので、整形外科専門医のいる病院への受診をお勧めします。

小児の骨折は成人に比べ骨癒合が早く自己矯正力も強いのですが、変形治癒か成長障害をきたす事もあるので正しい治療が必要です。
一方、高齢者では小さな外力で骨折を起こし、その後寝たきりになったりする事が多いので注意を要します。いずれにしろ、少しでも骨折が疑われたら整形外科専門医への受診をお勧めします。

当院では年間450例以上の骨折の手術を行っておりますので、骨折が疑われましたら、お気軽にご相談下さい。

打撲

局所に鈍的な外力を受け、皮下組織に種々の程度の損傷があることです。

打撲した箇所に一致して痛みや腫脹が見られ、時に内出血が生じ皮膚が紫色に変色したりすることもあります。

頭部や腹部の打撲では、脳や内臓の障害と合併している恐れもあるため、各専門医(脳神経外科・消化器科)の受診をお勧めします。

また、手足の打撲でも内出血が強いと、周りの神経や血管を圧迫して、手足の麻痺や血流障害を来たすことがあるので、たかが打撲と思わず、整形外科専門医の受診をお勧めします。

レントゲン検査で骨折がなくとも痛みが持続する場合には、まれに骨挫傷といって、骨に強い鈍的外力を受けたために、骨の内部が傷ついている場合があります。これは通常のレントゲン検査では分かりませんが、MRIを撮ることによりわかる場合がありますので、打撲後痛みが長引いている場合には、MRIの撮影をお勧めします。

捻挫

関節を強い力で捻ったときにその外力により関節の靱帯を痛めた状態です。症状としては、関節周辺の痛み、腫脹、内出血などがあります。

いちがいに、捻挫と言っても靱帯を伸ばしてしまった軽い程度のものから、靱帯が断裂してしまった重症のものまで様々なものがあります。ですから、その重症度に応じて湿布と弾力包帯の固定だけで済むものや、ギプス固定を行ったり、時に手術を要したりする場合もあります。

靱帯の損傷を放置しますと、その関節の不安定性が生じ捻挫を繰り返し、関節の軟骨や周囲の組織を痛めてしまう事がありますので、捻挫をしてしまったら整形外科専門医の受診をお勧めします。

捻挫は日常よく遭遇する外傷ですので軽く考えてしまいがちですが足首の捻挫を放置しますと、女性の場合ハイヒールが履けなくなるなど、膝の捻挫を放置しますと、何年か後に変形性膝関節症になってしまう場合もありますので注意を要します。

当院では、重症な膝の捻挫の場合、MRIを撮影し前十字靱帯や半月板の損傷がないかを検査することも可能です。

脱臼

関節に大きな外力が加わり、本来の運動範囲を超えて関節がはずれた状態です。

脱臼が起こるとその周辺の靱帯が関節包などの損傷や骨折を伴い、以後何回も脱臼と繰り返す(反復性)場合もあります。

関節に大きな外力を受けた後に動かそうとすると、激痛を生じます。また関節が動かない場合には放置しておきますと、脱臼を整復出来なくなったり、神経や血管を圧迫して、麻痺や血流障害を生じたり、脱臼がくせになる(反復性)場合もあるので、脱臼が疑われたら、整形外科専門医を受診し整復処置を受け、適切な固定をしてもらうことをお勧めします。

特に肩関節の脱臼は、若年者では適切な処置を怠ると、反復性に移行しやすく、その場合には手術を必要とする場合もあります。

腰が痛い

腰痛の原因は様々ですが、以下で主なものを挙げてみます。 個々の原因のみのこともあれば、いくつかの状態がミックスされて症状が出る場合もあります。

腰痛を治すための注意として一般的に言われているのは、

  • 長時間、椅子に腰掛け続けることを避ける
  • 中腰の姿勢を避ける
  • ひどいときは、薬を飲んで楽な姿勢で寝る

これだけでも随分違います。

1 筋・筋膜性腰痛症

腰の筋肉の疲労、腰の筋肉が弱いために起こる腰痛で、一番多い原因です。 レントゲンやMRIでは、異常を認めません。 痛い時期は、薬やシップを使って安静に寝て治療します。 痛みが楽になったら、腰痛体操などを行って腹筋・背筋を強くすることで腰痛の出にくい体質にしていくことが大切です。

2 ギックリ腰  

腰の筋肉の「肉離れ」のような状態で、重い物を持ったときや、無理な体勢をとったときに起きやすいです。 (少しかがんだだけで起こることもあります) やはり、痛み止めを使って、安静にすることが必要です。 立てないほど痛いときは、入院して安静加療することがあります。

3 腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板症

腰の骨(腰椎)には椎間板と呼ばれる軟骨の一種で出来た円盤状の部分があります。 この椎間板の中央部にある「髄核」という部分が外に出っ張ってきたり(椎間板ヘルニア)、年齢的な変化のために、椎間板全体の弾力が失われて出っ張ってきたりする(椎間板症)ような場合に、後方にある靱帯が椎間板に圧迫されて、腰痛が出ることがあります。

腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板症

同時に坐骨神経が圧迫されて炎症が起こると、「お尻~もも・ふくらはぎ」にまで痛みやしびれが出ることもあります(坐骨神経痛)。 椎間板の異常は、MRI検査でわかります。

症状が軽い場合は、薬を使ったり、牽引などの理学療法:リハビリにより外来通院で治療しますが、症状がひどい場合は、入院の上、持続硬膜外ブロック療法などを行うこともあります。 保存的な治療(手術などを行わず、投薬などで治す治療)で良くならない場合は、手術によって突出した髄核の摘出を行うこともあります。

肩が痛い

1 肩関節周囲炎(いわゆる四十肩、五十肩)

40~50代の人に多いのでこの呼び名があります。
特に原因なく、自然と起こる肩の痛みで、肩の腱板というスジの部分での年齢的な変化による一過性の炎症が原因です。
腕を上に挙げたり、背中に手を回したりすると痛みが強くなります。 ひどいときは夜間に目が覚めるほどの痛みです。 完全に治るには一年くらいかかると言われていますが、注射療法で痛みの強い時期を短くできることがあります。

2 動揺肩

生まれつき、または脱臼などが原因で、関節がゆるくなっていることによる肩の痛みがあります。
重い物を持ったり、特定の姿勢をすることによって肩がはずれかかるような感じが出現して痛くなったりします。 リハビリで肩の筋力を強化して関節の安定化をはかることが行われますが、症状がひどいときは、手術により関節のゆるみを縮めることもがあります。

肩こり、首の痛み

様々な原因が考えられますが、大きく3つに分けられます。

1 頸椎の異常(頸椎の年齢的な変形や髄間板ヘルニアなど)

頸椎の年齢的な変形や髄間板ヘルニアは、レントゲンとMRIで検査します。
お薬や理学療法:リハビリ(電気・牽引など)で治療します。

2 なで肩の体型

首に対して肩の位置が下がっている(なで肩)の人は、首から肩にかけての筋肉やスジが、慢性的に緊張状態にあるため肩こりが起きやすいと言われています。
お薬や理学療法:リハビリの他に治療体操が有効な場合があります。

3 眼精疲労・ストレスの強いとき

原因を取り除くのが一番良いのですが、軽い安定剤で効くことがあります。

肘が痛い

テニス肘(上腕骨外上顆炎)

手の指や手首を動かす筋肉の多くは「肘」から始まっていますが、この部分での炎症が原因の痛みです。
肘の外側(親指側)が、特にケガをしたわけでもないのに痛みます。 特に、「タオルをしぼる動作」、「片手で重い物を持つ動作」で痛みが強くなります。テニスをする人に多いのでこの名がありますが、手をよく使う仕事の人や、パソコン業務の人、主婦などにも多いです。
注射療法やテニス肘サポーターをつけ、手や腕を安静にして治療します。(注射やサポーターをしながらゴルフをしている人をよく見かけますが、そういう人の多くは治りません。手を安静にするという本人の自覚が必要です。)

ちなみに内側(小指側)が痛いものは「上腕骨内上顆炎」といいます。

膝が痛い

膝の痛みには、事故やスポーツ外傷などで急に発生するもの、運動のやりすぎによるもの、中年以降慢性的に起きてくるものがあります。  外傷による障害の代表的なものとして半月板損傷、靱帯の損傷があげられます。

半月板損傷

膝の関節の隙間には内側、外側それぞれに"半月板"と呼ばれる三日月型の線維性の軟骨があり、膝にかかる衝撃を分散させる働きをしています。スポーツ等で強く膝を捻ったときに、挟まり込む事によって半月板に傷がつく事があります。

半月板損傷

症状

怪我の直後には、強い痛みと共に腫れたり、関節内に血が溜まる事もあります。しばらくして痛みが和らいでも、膝の中で引っかかる様な感じが続いたり、挟まり込みによって膝が動かなくなる(ロッキング)症状や、歩行中膝くずれを生じたりする事があります。

診断

MRI検査が有用です。

治療

関節鏡(関節の中を見る内視鏡)を使って、小さな切開で損傷部を部分切除し、挟まり込みを無くす方法が一般的です。日帰り手術でも可能ですが、当院では痛みを取り関節周囲の緊張を無くした状態で手術を行う為、1~2週間の入院をしての治療をお勧めしています。

靱帯損傷

膝を支え安定化をさせる為、膝には内側、外側の側副靱帯及び前後の十字靱帯の、計4つの靱帯があります。半月板の損傷と同じようにスポーツ等で膝を強く捻った時やオートバイ事故の様な交通外傷で発生する事もあります。

症状

発生時、強い膝の痛みと共に皮下や関節内の出血を生じます。一番問題になるのは、関節の不安定性であり、膝くずれや持続する痛みの為スポーツ活動が出来なくなることもしばしばあります。

治療

損傷を受けた靱帯が治ってくるまでの間、膝関節をギプスなどで固定し、その後、装具療法を行う場合が一般的ですが、いくつかの靱帯が同時に切れている時(複合靱帯損傷)や、特に前十字靱帯損傷後、膝がはずれる様な強い不安定性(回復不安定性)が残り、日常生活やスポーツ活動に支障をきたす場合には手術治療の適応となります。

変形性膝関節症

50歳を過ぎた頃になると、特に理由もなく立ち上がる際に膝に痛みを生じたり、膝の曲げ伸ばしがしにくくなってくる事があります。

これは、膝の関節の軟骨が老化によりすり減ってくる事により痛くなるもので、変形性膝関節症と言います。関節内に水が溜まったり、正座がこんなになる場合もあります。

治療として、消炎鎮痛剤の内服、膝の筋力強化、足底板による装具療法などを行いますが、良くならないときにはヒアルロニン酸ナトリウムという軟骨の材料を関節内に注入する場合もあります。変形が強く、保存療法(手術などを行わず、投薬などで治す治療)が効かない場合、手術が必要となりますが、軟骨が残っている部分で体重を支えられる様に骨切り術を行ったり、人工膝関節に置換する事が行われます。

手がしびれる

手がしびれる場合、整形外科的な原因として次のようなものがあります。

A 首~肩にかけて原因がある場合

1 頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア

首の骨(頚椎)や椎間板の年齢的な変化・変形により、首から腕・手に伸びる神経が圧迫されてしびれ・痛みが出ることがあります。

首を後ろに傾け(上を向いて)、症状がある側に頭を傾けると症状が強くなることが多いです。 レントゲン・MRIなどで診断して、お薬や理学療法:リハビリ(温熱・牽引)で治療していきます。

2 胸郭出口症候群

首から腕にいく神経は骨の下を通過していますが(腕神経叢)、この部分で神経の圧迫・炎症が起きるとしびれが出現します。小指側がしびれることが多いです。なで肩の女性に多い傾向があります。
鎖骨の上の凹みの部分を圧迫すると症状が強くなり、頭の後ろで手を組む姿勢をとると症状が楽になることが多いです。首から肩にかけての筋肉を強化するリハビリが治療の中心になりますが根気が必要です。

B 腕や肘に原因がある場合

肘部管症候群

肘の内側(小指側)後方を走る尺骨神経が、この部分で炎症を起こすことが原因のしびれで、薬指と小指がしびれるだけでなく、指の動きまで悪くなることがあります。
肘の内側・後方を圧迫するとひびく部分があることが多いです。 早めに神経の圧迫をとる手術をしないと、どんどん症状が悪化することも多いので、整形外科を受診することをお勧めします。

C 手首に原因がある場合

手根管症候群

親指・人差し指・中指がしびれて、動きが悪くなることがあります。
手をよく使う仕事の人や主婦に多く、手のひらと手首の境目付近での正中神経の炎症が原因のしびれです。ここを指で叩くとひびくことが多いです。 初期のうちは、薬や手首の安静・注射などで良くなることも多いですが、進行すると手術による神経圧迫の解除が必要になります。

足が痛い

1 外反母趾

ハイヒールを履くことが多い女性にしばしば起こります。 母趾の付け根が腫れて痛んだり、足にタコができたりします。 軽症であれば装具や足底板などで治療します。 変形が強い場合は、母趾をまっすぐにするような手術もあります。

2 アキレス腱周囲炎

歩くことが多い人に起こることが多いです。アキレス腱と「かかと」の骨の境目あたりが、特に歩くときに痛みます。治療には足の安静が必要ですが、人間は歩かない訳にはいきません。治療方法しては歩くときの「かかと」の衝撃をやわらげるために靴底にクッションをいれたり、薬や注射療法を行います。治るまでに少し時間がかかります。

3 足底腱膜炎

特に原因がないのに、「かかと」の足底内側が痛い、というような場合、足底腱膜という「土踏まず 」付近にあるスジが慢性炎症を起こしていることがあります。歩きすぎが原因のことが多いです。レントゲンでは特に異常ありませんが、50代以上の方では「かかと」の骨の一部が「とんがる」ように変形している場合があります(踵骨棘)。この疾患も治るのに時間がかかりますが、靴底にクッションを入れたり、内服・外用剤 、注射、温熱療法などを行います。

足がしびれる

足がしびれる原因として次のようなものが考えられます。

1.腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは、腰部内部にある脊柱管が何かしらの原因によって狭くなって起こる神経の圧迫が元で、様々な症状を発生させるという病気です。

主な原因は老化で、加齢によって起こるからだの変化が脊柱管を変形し狭くしていまうというものです。また、生まれつき脊柱管が狭い状態である、いわゆる先天性の場合もあります。

腰部脊柱管狭窄症の場合、背骨の構造上真っ直ぐに立っていると一層狭くなるため、長時間立っていたり歩き回ることで症状が強くなる傾向があります。しかし座って休憩したり腰を曲げて寝転んだりすると、狭窄が緩みすぐに症状が軽くなるという特徴があります。

治療は、少し前かがみになる程度の姿勢で歩くようにして脊柱管の神経を圧迫するような姿勢を避けるようにします。症状が出る前にこまめに小休憩するなどして、症状が出ないように努めます。補助するための姿勢矯正装具としてコルセットを使用する場合もあります。

また、消炎鎮痛剤を用いて症状を軽くしたり、神経の血流を良くする血行改善薬といった薬物療法やブロック治療が有効ですが、これらで改善が見れない場合には手術を行い脊柱管を拡大することもあります。

2.閉塞性動脈硬化症

下肢の閉塞性動脈硬化症とは、足に血液を運ぶ血管がつまり、血液不足に陥った部分が痛んだり、冷えたり、時には壊疽から下肢切断にいたることもある疾患です。

歩行時にふくらはぎがしびれたり重く痛んできて、数分立ち止まって休むとまた歩けるという脊柱管狭窄症とよく似た症状となります。

両者の治療法は全く異なるため早期に正確な診断をつけることが重要です。

当院では閉塞性動脈硬化症と診断がついた場合、速やかに血管外科へ紹介しております。

3.糖尿病

糖尿病の症状として、手足のしびれがあります。糖尿病になると、血液中のブドウ糖の数値が上昇し血糖値が上がります。これにより神経細胞がブドウ糖にさらされ神経に異常をきたし、手のしびれや足のしびれとして発症するのです。症状が進行するとしびれるだけでなく、感覚が鈍り怪我などによる痛みや異常を感知できなくなってきます。

足のしびれはこのように重大な疾患の前兆として現れていることもある為、軽視することは非常に危険です。早い段階で検査や治療を受けることが重要となります。